この記事でわかること
- 「十月十日」という数え方と、月のリズムのつながり
- 胎内の十か月を天の神々の物語として描いた経典『九天生神章経』のこと
- ひと月ごとに魂・からだ・神々がそろっていく、道教のいのちの見方
「とつきとおか」。
赤ちゃんがお母さんのお腹の中にいる期間を、昔からこう呼びますよね。
でも、ちょっと不思議に思ったことはありませんか。
今の医学では、妊娠期間の目安は40週。
なのに、なぜ「十月十日」なのでしょう。
しかも、10と10。きれいに数字が並んでいます。
私には、3人の子どもがいます。
ぴったり十月十日で生まれた子は、ひとりもいませんでした。
でも3人とも、その前後の満月の日に生まれてきました。
道教や仏教の経典から、いのちの始まりについて学んできました。
それでも、人がこの世に生まれてくるまでの月日は、今でも不思議でたまりません。
実は、この「お腹の中の十か月」を、ひと月ずつ、天の神々の物語として描いた経典があります。
今日は、その経典の世界をのぞいてみます。
※この記事は、道教の考え方を紹介する読みものです。医療の代わりではありません。からだの不調があるときは、医療機関に相談してください。
十月十日と、月のリズム

「十月十日」の数え方には、いくつかの説明があります。
よく知られているのは、28日をひと月として数える方法です。
28日×10か月で280日。
今の妊娠期間の目安40週(280日)と、ほぼ同じ日数になります。
月が満ちて欠けて、また満ちるまでは、およそ29.5日。
昔の人は、夜空の月を時計にして、いのちの時間を数えていたのかもしれません。
3人の子どもが満月の日に生まれてきたことを思うと、私はどうしても、月といのちのつながりを感じてしまいます。
天生神(てんせいしん)の経典『九天生神章経』
九つの天と、天生神
道教には『洞玄霊宝自然九天生神章経(どうげんれいほうしぜんきゅうてんせいしんしょうきょう)』という経典があります。
長い名前なので、ここでは『九天生神章経』と呼びます。

道教では、天は九つの層に分かれていると考えます。
この経典には、その九つの天の名前が出てきます。
- 鬱単無量天(うつたんむりょうてん)
- 上上禅善無量寿天(じょうじょうぜんぜんむりょうじゅてん)
- 梵監須延天(ぼんかんしゅえんてん)
- 寂然兜術天(じゃくねんとじゅつてん)
- 波羅尼密不驕楽天(はらにみつふきょうらくてん)
- 洞元化応声天(どうげんかおうせいてん)
- 霊化梵輔天(れいかぼんぽてん)
- 高虚清明天(こうきょせいめいてん)
- 無想無結無愛天(むそうむけつむあいてん)
それぞれの天には神がいて、人が生まれてくるときに、その気を授けると考えられてきました。
こうして人を生み出す天の神々を、あまねくもりでは「天生神」と呼んでいます。
魂が、天から降りてくる経典
この経典は、ひとことで言えば「魂が、天から胎内へ降りてくるまで」を描いたものです。
道教の世界では、難しいお産のときに唱えられたとも伝えられています。
原文はとても難しいので、昔から注釈と一緒に読まれてきました。
胎内の十か月、ひと月ずつの物語
経典やその注釈では、お腹の中の十か月が、ひと月ずつ、こんなふうに語られています。
タイトルの「10の愛のステップ」は、この十か月のことです。
| 月 | 胎内で起きること(伝承) |
|---|---|
| 1か月目 | 天の気が集まって、いのちを包む「胞」ができる |
| 2か月目 | 「胎」として、形のきざしが現れる |
| 3か月目 | 陽の神が降りて、三つの魂(三魂)が宿る |
| 4か月目 | 陰の神が降りて、七つの魄(七魄)が宿り、からだを静かに守る |
| 5か月目 | 五臓がそろう |
| 6か月目 | 六腑が整う |
| 7か月目 | 目・耳・鼻・口の七つの穴(七竅)が開く |
| 8か月目 | 「八景」と呼ばれる神々が、からだの上・中・下に配置される |
| 9か月目 | 天の神々が降りて、からだ中に神々が満ちる |
| 10か月目 | 気が満ちて、生まれる準備が整う |
魂が宿り、からだを守る魄が宿る
おもしろいのは、3か月目と4か月目です。
3か月目には、動きをつかさどる陽の神が「三魂」として宿る。
4か月目には、からだを静かに守る陰の神が「七魄」として宿る。
ちょうど、お腹の中で赤ちゃんが動きはじめる時期とも重なります。
昔の人は、その胎動に「魂が降りてきた」と感じたのかもしれません。

七つの窓が開き、神々が満ちる
7か月目には、目・耳・鼻・口の七つの穴が開きます。
注釈では、その七つの窓の主は「心」だと説かれます。
外とつながる窓が開いても、その中心にいるのは心。
8か月目、9か月目と進むにつれて、からだの中には神々が配置され、満ちていきます。
注釈には「三万六千」という、気が遠くなるような数の神々が出てきます。
数が正確かどうかより、「からだのすみずみまで神々がいる」という感覚を伝えたかったのだと思います。
あまねくもりの読み解き:天に見守られて組み立てられた
ひと月も、ひとりではなかった
この経典を読んでいて、私がいちばん心を動かされるのは、どの月にも、天の神々が関わっているということです。
魂が宿る月も、内臓が整う月も、目や耳が開く月も。
いのちは、お腹の中でひとりきりで育っていたのではない。
九つの天から順番に気が届いて、見守られながら、ひとつずつ組み立てられていった。

そう読むと、「十月十日」という言葉が、ただの日数ではなく、天と母とお腹の子が一緒に過ごした時間の名前に聞こえてきます。
生まれたあとも、神々はいてくださる
道教では、生まれたあとも、からだには神々が宿り続けると考えます。
古い書物『黄庭経(こうていきょう)』には、髪や目、耳、心臓や腎臓に宿る神々の名前まで記されています。
私が学んだ護符の系譜では、からだに宿り、いのちを支える神々を「九霊神」と呼んでいます。
生まれる前は天生神に組み立てられ、生まれたあとは九霊神に支えられている。
あまねくもりでは、この二つの神々の話を、いのちを見つめる土台にしています。
自分を責めたくなる日も、からだの調子が揺らぐ日も。
あなたは、十か月かけて、天の神々が一緒に組み立てたいのちです。
そのことを、ときどき思い出してもらえたらうれしいです。
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参考:『洞玄霊宝自然九天生神章経』とその注釈、『黄庭内景経』。月ごとの内容は、注釈書によって表現が少しずつ異なります。

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