この記事でわかること
- 「白龍にきいてみた」という連載が生まれたいきさつ
- 白龍のハクちゃんが、どんな存在なのか
- 神饌(しんせん)と、見えない存在とのご縁の結び方
「どうして『白龍にきいてみた』という名前なんですか?」
ときどき、こんな質問をいただきます。
龍と話すって、どういうこと?
その白龍は、どこから来たの?
この連載のはじまりの回として、今日はそのお話をします。
少し長くなりますが、お茶でも飲みながら、のんびりお付き合いください。
はじまりは、赤い龍の「何用か」でした
当時わたしは、知り合いの方に頼まれて、その方についている龍の色を見ていました。
お伝えした色は、ご本人が以前から言われていた色と同じだったそうで、「当たってる」と言ってもらえていました。
その方には、何柱かの龍がついていました。
なかでもひときわ大きく、立派だったのが、赤い龍です。
ある夜のこと。
その赤い龍のほうから、急にこちらへアクセスがありました。
「……何用か」
低く、静かな声でした。
存在感もパワーも、とにかく桁違い。
わたしは冷や汗だらだらで、内心「ドヒャー」です。落ち着いてなんて、まったくいられませんでした。
それでもなんとか、正直に答えました。
「あなたとともにいる方に頼まれて、何度か色を見させてもらっていました」
赤い龍は、黙ったまま。
なにも答えてくれません。
その沈黙の空気がどうにも耐えられなくて、わたしはすっかり焦っていました。
試されているような気がして、気づけば自分の思いを、そのまま口にしていました。
「わたしは、自分の持っている力で、まわりの人の役に立ちたいんです。そして、一緒に豊かになっていきたい」
赤い龍は何も言わず、すっと姿を消しました。
え、まちがえた?
厚かましかったかな。
その夜は、少し落ち着かない気持ちのまま眠りにつきました。
庭の飾り井戸から、白い顔がのぞいていた
次の日。
いつものように庭の草木を眺めていると、なにかの視線を感じました。
顔を上げると、庭の飾り井戸から、白い龍の顔がちらりとこちらをのぞいていたのです。
気づいたら、お供えをしていた
白い龍に気づいてすぐ、わたしは考えるより先に、お供えの準備をしていました。
お盆に白いごはんとお水、日本酒をのせて、庭の一角へ。
きちんとした作法ではない、ごく簡単なものです。
「来てくださって、ありがとうございます」
そんな気持ちが、自然と手を動かしていました。
チンアナゴのような一週間
それから一週間ほど、白い龍は飾り井戸から少し顔を出しては引っこめ、をくり返していました。
ある夜は、家の屋根よりも高く、にょーんと伸びて、こちらを見下ろしていたこともあります。
その姿は、さながら庭から生えた特大のチンアナゴ。
こわいというより、なんだかおかしくて、目が離せませんでした。
そうしているうちに、少しずつ、からだ全体を見せてくれるようになっていきました。
人の世界では、こう伝わっています
神様にお供えする食べ物や飲み物を、神饌(しんせん)といいます。
古くは「みけ(御食)」とも呼ばれ、お酒は「みき(御酒)」。今も「お神酒」という言葉に残っていますね。
神饌は、米・酒・塩・水が基本とされています。
神社では毎朝夕にお供えをすることもあり、これを日供(にっく)と呼びます。
おもしろいのは、もともとの神饌が、人が実際に食べられるように調理したものだったということです。
つまり、大切なお客さまをもてなすごはんと同じ考え方。
お供えしたものは、あとで「お下がり」としていただきます。神様と同じものを、同じ食卓で分けあうのです。
わたしが庭に置いたお米とお水とお酒は、作法としてはずいぶん簡単なものでした。
それでも、「あなたをお客さまとしてお迎えします」という、いちばん古いかたちの合図にはなっていたのかもしれません。
新幹線の窓の向こうで、はじめての会話
しばらくすると、白い龍は飾り井戸からすっかり抜け出たようでした。
厳密には井戸ではないので、飾り井戸は以前のように、ただの飾り井戸としてそこにあるだけになりました。
ここは川と川が合流する土地です。
たまたま出入り口に使っただけなのかも。そう思って、わたしもふだんの暮らしに戻っていました。
白龍がふたたび姿を見せたのは、東京への出張で新幹線に乗っていたときです。
窓の外を流れる雨の景色のなかで、はじめての会話がはじまりました。
あとで聞いたところによると、あの赤い龍は、わたしのことを「芽を出したいのに、芽吹くにはエネルギーが足りていない種」のように感じたのだそうです。
そして自分のかわりに、白龍を導き役として送ってくれた。
白龍は中部地方のほうから、はるばるこの土地まで飛んできてくれたのでした。
「なんで、こんな遠くまで来てくれたの?」
「この土地にも龍はいるんだけどね。ぼくは、動く力を届けに来たんだ。とーこちゃんがやろうとしてること、支えてあげてって頼まれたんだよ」
お供えのこと、きいてみた
「ねえハクちゃん。あのとき、お米とお水とお酒を置いたの、覚えてる?」
「覚えてるよ〜。うれしかった」
「あれって、関係あった?」
「あったと思うよ。どうぞって言ってもらえたら、こっちも入っていきやすいもん。道ができる感じかな」
ご縁は「想いを立てる」と「受け取ります」から結ばれる
ふり返ってみると、ハクちゃんとのご縁には、ふたつの大事な場面があったように思います。
ひとつめは、赤い龍の前で、自分の想いを口にしたことです。
「まわりの人の役に立ちたい。一緒に豊かになっていきたい」
焦りながらではありましたが、わたしは自分が何をしたいのかを、はっきり伝えていました。
こちらから旗を立てて、「こういう想いがあるんです」と示したところから、ハクちゃんが来てくれるようになったのだと思います。
願いがぼんやりしたままだと、見えない存在も、どこをどう手伝えばいいのかわかりにくいのかもしれません。
ふたつめが、お供えです。
見えない存在とのご縁は、向こうから一方的にやってくるだけではないのかもしれません。
神様に近い存在や、そのお使いとしっかりつながりたいとき。こちらからも「受け取ります」「お迎えします」という姿勢を示すことが、大切なのではないか。
お供えは、そのためのいちばんわかりやすい作法です。
想いを立てること。迎える姿勢を示すこと。
考えてみれば、人どうしも同じですよね。
「こんなことがしたい」と話してくれる人は、自然と応援したくなります。
訪ねてきてくれた人に「ようこそお越しくださいました。どうぞお入りください。」と言うかどうかで、その後の関係はずいぶん変わります。
神社でお参りするとき、名前と住所を名乗ってからお願いをする、という習わしを聞いたことがある方も多いと思います。
手水を使い、鳥居の前で一礼するのも、「お邪魔します」「あなたに会いに来ました」という合図。
そう思うと、いつものお参りが少しちがって見えてきます。
だから「きいてみた」
そんなふうにして始まった、ハクちゃんとのご縁。
ハクちゃんは、神様っぽい荘厳な話し方はしません。
20代の男の子のような感じで、偉ぶらず、親切で、ちょっとひょうきん。
ときどき語尾がのびて「〜だよ〜」なんて言います。弟や年下の男友達と話している感覚に近いかもしれません。
それでいて、こちらが聞けば、ものごとの本質をあっさり教えてくれる物知りです。
だからこの連載は、「教わる」ではなく「きいてみた」。
上から教えてもらうのでも、一方的に話すのでもありません。
気になったことを気軽にきいて、返ってきた答えを一緒に面白がる。そんな関係を、そのまま名前にしました。
これから、ハクちゃんの答えと、人の世界に伝わる知恵とを並べながら、見えない世界のふしぎをお届けしていきます。
見えない存在は、思っているよりずっと近くで、こちらが立てる旗と「どうぞ」のひと言を待っているのかもしれません。
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参考:『日本大百科全書(ニッポニカ)』「神饌」(コトバンク)

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