この記事でわかること
- 顔の7つの穴「七竅(しちきょう)」と、『荘子』の渾沌(こんとん)の寓話
- 胎内の7か月目に七竅が開く、という道教の経典の話と、それぞれの窓にいる神様
- おへそのツボ「神闕(しんけつ)」――神様の宮殿の門という名前の意味
突然ですが、クイズです。
顔についている「穴」を数えると、いくつでしょう。
右目、左目。右耳、左耳。右の鼻の穴、左の鼻の穴。そして口。
答えは7つ。
この7つの穴を、東洋では「七竅(しちきょう)」と呼びます。
あたりまえすぎて、数えたこともなかったかもしれません。
でも道教では、この7つの穴にも、そしておへそにも、大切な意味があると考えてきました。
※この記事は、道教や東洋の考え方を紹介する読みものです。医療の代わりではありません。からだの不調があるときは、医療機関に相談してください。
『荘子』の、穴をあけられた神様の話
穴のない帝「渾沌」
道教の源流のひとつ『荘子(そうじ)』に、少しこわくて不思議な話があります。
顔に穴がひとつもない「渾沌(こんとん)」という帝がいました。
渾沌に手厚くもてなされた2人の帝は、お礼をしようと考えます。
「人にはみんな7つの穴があって、見たり、聞いたり、食べたり、息をしたりしている。渾沌にだけはそれがない。あけてあげよう」
2人は毎日ひとつずつ穴をあけました。
そして7日目、渾沌は死んでしまいます。
穴は、外とつながる窓
この話の読み方は、昔からいろいろあります。
よかれと思ってしたことが、相手のありのままを壊してしまう話。
まだ分かれていない世界に、区切りを入れていく話。
あまねくもりでは、こう受け取っています。
7つの穴は、外の世界とつながる窓。
あけると、たくさんのものが入ってくる。
でも、入れすぎると、内側の静けさが失われてしまう。
スマホの画面、通知の音、まわりの声。
今の私たちの7つの窓は、一日じゅうあけっぱなしかもしれません。
窓が開くのは、胎内の7か月目
天生神が開けてくださった窓
シリーズ第1回でご紹介した『九天生神章経』では、お腹の中の7か月目に、この七竅が開くと語られています。 → 私たちが「とつき(十月)」をかけて生まれてきた理由。胎内で始まる10の愛のステップ 九つの天の神々、あまねくもりでいう「天生神」が、ひと月ずついのちを組み立てていく中で、窓を開けるのは7か月目。
魂が宿り、五臓六腑がそろったあとです。
渾沌の話とは反対に、こちらの窓は、中がちゃんと整ってから開けられます。
内側ができあがってから、外とつながる。
その順番にも、天生神のやさしさが感じられます。
窓の主は「心」
この経典の注釈では、七つの窓の主は「心」だと説かれます。
心には、心の神様「丹元(たんげん)」がいてくださいます。 → あなたの五臓六腑には、あなたを1秒も休まず生かそうとする神様たちが宿っている
そして『黄庭経』によれば、それぞれの窓にも神様がいてくださいます。 → あなたの身体は、神様たちが暮らすお城。「身神(しんしん)」が居心地のいいお部屋の作り方
| 窓 | 神様の名前 |
|---|---|
| 目 | 明上(めいじょう) |
| 耳 | 空閑(くうかん) |
| 鼻 | 玉壟(ぎょくろう) |
| 舌(口) | 通命(つうめい) |
窓のそばには窓の神様がいて、奥には心の神様がいる。
窓を開けっ放しにすると、窓の神様たちも、奥にいる心の神様も、休む間がありません。
下の2つ、そしておへそという「10番目の門」
九竅(きゅうきょう)
東洋の考え方では、顔の7つに、からだの下にある2つを足して「九竅(きゅうきょう)」と呼びます。下の2つは、古典では「二陰(にいん)」とまとめて呼ばれ、前の「前陰(ぜんいん)」と後ろの「後陰(こういん)」を指します。
そして「腎」は、耳と、この下の2つの穴に通じているとされます。
腎の話は、こちらで書いています。 → 【黒い食材の秘密】生命力の源「腎」の神様を喜ばせる、毎日の一口養生
女性の前陰には、尿の出口と、赤ちゃんが生まれ出てくる道(膣)の両方が含まれます。
古い数え方なので、今の解剖学のように穴をひとつずつ数えてはいないのです。
十か月目、天生神に組み立てられたいのちは、この前陰の道を通って、この世に出てきます。
外とやりとりする窓であると同時に、いのちを送り出す門でもあるのです。
入れる窓と、出す窓。
九つそろって、からだは外の世界とやりとりをしています。
おへそは「神様の宮殿の門」
では、おへそは?
おへそは、生まれてからは閉じていますが、お腹の中にいたころは、お母さんとつながっていた場所です。
ツボの名前では、おへそを「神闕(しんけつ)」と呼びます。
「闕」は、宮殿の門のこと。
つまり神闕とは、「神様の宮殿の門」。
胎内にいた十か月、天生神からの気も、お母さんからの養いも、この門を通って届いていた。
昔の人がそう感じていたからこそ、こんな名前をつけたのかもしれません。
あまねくもりの読み解き:内側を向いた「10番目の門」
あまねくもりでは、このおへそを「10番目の門」と読み解いています。
外に開く9つの穴とちがって、今は内側を向いている門です。
外の世界とつながるのが9つの窓なら、
天と、いのちのはじまりとつながっていたのが10番目の門。
この門は、今もあなたのまんなかで、静かに宮殿を守っています。
窓をひとつずつ閉じて、門に戻る
外に向きっぱなしの日は、窓の神様たちにひとりずつ、おやすみを言うようにしてみてください。
- 目を閉じて「明上さん、おつかれさま」
- 音を追いかけるのをやめて「空閑さん、おつかれさま」
- 鼻からゆっくり息をして「玉壟さん、おつかれさま」
- 口をやさしく閉じて「通命さん、おつかれさま」
- 最後に、からだのまんなかの10番目の門を思い浮かべて、「ただいま」
窓を全部閉める必要はありません。
渾沌の話が教えてくれるのは、窓を開けすぎないこと。
外とつながる時間と、門に戻る時間。
その両方があって、お城の神様たちは安心して働けるのだと思います。
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参考:『荘子』応帝王篇(渾沌の寓話)、『洞玄霊宝自然九天生神章経』とその注釈、『黄庭内景経』至道章。九竅・神闕は東洋医学の考え方による。

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