タオの智慧

あなたの五臓六腑には、あなたを1秒も休まず生かそうとする神様たちが宿っている

この記事でわかること

  • 東洋の「五臓(ごぞう)」と、今の医学の内臓とのちがい
  • 道教の経典『黄庭経』に記された、五臓に宿る神様たちの名前と呼び名
  • 五臓が「心のはたらき」まで預かっているという、昔の人のからだの見方

「なんか今日は、スイッチが入らないな」
そんな日、ありますよね。
ソファでごろごろして、気づけば夕方。

でもその間も、からだの中ではずっと働いている方々がいます。
心臓は脈を打ち、肺は息をして、胃腸は食べたものを消化している。
私たちが休んでいても、内臓は1秒も休みません。

道教では、この内臓の一つひとつに、神様が宿っていると考えてきました。
しかも、その神様たちには、ちゃんと名前があります。

前回の記事では、からだ全体を「神様たちが暮らすお城」として見る道教の考え方を紹介しました。 → あなたの身体は、神様たちが暮らすお城。「身神(しんしん)」が居心地のいいお部屋の作り方 今回は、そのお城の中心部。
胸とお腹の奥で、毎日あなたを生かしてくださっている五臓の神様たちを、ひとりずつ訪ねてみます。

※この記事は、道教や東洋の考え方を紹介する読みものです。医療の代わりではありません。からだの不調があるときは、医療機関に相談してください。

東洋の「五臓六腑」とは

「五臓六腑にしみわたる」の五臓六腑


「五臓六腑にしみわたる」という言い方がありますよね。
この「五臓六腑」は、東洋の古い考え方から来た言葉です。

五臓は、肝(かん)・心(しん)・脾(ひ)・肺(はい)・腎(じん)の五つ。
六腑は、胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦(さんしょう)の六つです。

ここで大事なのは、今の解剖学の「肝臓」「腎臓」と、まったく同じ意味ではないということです。
東洋の考え方では、臓器そのものというより「はたらきのまとまり」として見ます。

五臓東洋の考え方で担うとされること
肝気や血のめぐりをのびやかに整える
心血を送り、心のはたらきの中心となる
脾食べたものから、からだの力をつくる
肺呼吸をし、からだの表面を守る
腎生まれ持ったいのちの力をたくわえる

五臓は、中身を「たくわえる」部屋。
六腑は、食べものや水を「通して運ぶ」通路。
お城でいえば、五臓は大切なものをしまう蔵で、六腑は人や荷物が行き交う廊下や門のようなものです。

胎内で、五臓がそろう月

シリーズ第1回でご紹介した『九天生神章経』を覚えているでしょうか。 → 私たちが「とつき(十月)」をかけて生まれてきた理由。胎内で始まる10の愛のステップ お腹の中の十か月を、天の神々がひと月ずつ見守るという経典です。


この経典では、5か月目に五臓がそろい、6か月目に六腑が整うと語られています。
天生神から気を授かって、まず魂が宿り、からだを守る魄(はく)が宿り、そのあとに五臓六腑ができていく。

つまり五臓六腑は、天の神々が順番に組み立ててくださった、お城の中心部なのです。

『黄庭経』に記された、五臓の神様たち

神様の名前と、もうひとつの呼び名

道教の経典『黄庭経(こうていきょう)』には、五臓に宿る神様たちの名前が記されています。
しかも、名前だけでなく「字(あざな)」と呼ばれる、もうひとつの呼び名まであります。
昔の中国では、人には本名とは別に、親しく呼ぶための名前がありました。
神様にも、それがあるのです。

宿る場所神様の名前字(もうひとつの呼び名)
心丹元(たんげん)守霊(しゅれい)
肺皓華(こうか)虚成(きょせい)
肝龍煙(りゅうえん)含明(がんめい)
腎玄冥(げんめい)育嬰(いくえい)
脾常在(じょうざい)魂停(こんてい)

名前に込められた、それぞれの役目

名前を一つずつ見ていくと、昔の人が五臓をどう感じていたかが伝わってきます。

心の神様は「丹元」。赤い、いのちのもと。
字は「守霊(しゅれい)」、霊を守る方。
心は、からだの中で魂の居場所を守る、王様のような場所と考えられてきました。

肺の神様は「皓華」。白く輝く華。
字は「虚成(きょせい)」、からっぽであることで成り立つ方。
息を吸うには、まず吐いて空けなければならない。
肺のはたらきそのものが、名前になっているように感じます。

肝の神様は「龍煙」。龍がのぼっていく煙。
字は「含明(がんめい)」、明るさを内に含む方。
気や血をのびやかにめぐらせる肝には、天にのぼる龍のイメージがぴったりです。

腎の神様は「玄冥」。黒く、深く、静かなもの。
字は「育嬰(いくえい)」、赤ちゃんを育てる方。
生まれ持ったいのちの力をたくわえる腎には、次のいのちを育てる名前がついています。

脾の神様は「常在」。いつもそこにいる方。
字は「魂停(こんてい)」、魂をとどめる方。
毎日休まず、食べたものから力をつくってくれる脾。
その脾が魂をここにとどめてくれている、という見方には、ハッとさせられます。

五臓は「心のはたらき」も預かっている

東洋の古い医学書『黄帝内経(こうていだいけい)』には、五臓がそれぞれ心のはたらきをしまっている、という考え方が出てきます。

  • 心は「神(しん)」をしまう:意識や、その人らしさの中心
  • 肺は「魄(はく)」をしまう:からだを静かに守る力
  • 肝は「魂(こん)」をしまう:心ののびやかさや、未来を思い描く力
  • 脾は「意(い)」をしまう:考えをまとめる力
  • 腎は「志(し)」をしまう:やりとげようとする力

第1回で、胎内の3か月目に「三魂」が、4か月目に「七魄」が宿るというお話をしました。
その魂は肝に、魄は肺にしまわれている。
天から授かったものが、からだの中にきちんと居場所をもらっている。
五臓は、ただの臓器ではなく、天からの授かりものをしまう蔵でもあるのです。

五臓と喜怒哀楽のつながりは、別の記事でくわしく書きます。

あまねくもりの読み解き:1秒も休まないチーム

ひとりではなく、チームで働いてくださっている

五臓の神様たちの名前を眺めていると、私はいつも、ひとつのチームを思い浮かべます。

心の丹元さんが全体を見守り、
肺の皓華さんが空気を入れかえ、
肝の龍煙さんがめぐりを整え、
脾の常在さんが毎日の力をつくり、
腎の玄冥さんが、いのちの底力をたくわえている。

だれかがしんどいときは、ほかのだれかが少し多めに働く。
そうやって、あなたというお城を、毎日まわしてくださっている。

「スイッチが入らない日」も、このチームは休みません。
あなたがごろごろしている間も、黙って働き続けてくださっています。
そう思うと、何もできなかった日の自分を責める気持ちが、少しゆるみませんか。

名前で「ありがとう」を伝える

神様に名前があるということは、名前で呼べるということです。

『黄庭経』は、もともと神々の姿と名前を心に思い浮かべるための経典だったと伝えられています。
名前を呼ぶことは、昔から神様とつながるための大切な方法でした。


あまねくもりでは、こんなふうにおすすめしています。

  • ごはんをおいしく食べられた日は、脾の常在さんに「ありがとう」
  • 深呼吸が気持ちよかった日は、肺の皓華さんに「ありがとう」
  • がんばりすぎた日は、心の丹元さんに「今日もおつかれさま」

全部の名前を覚えなくて大丈夫です。
ひとりだけ、気になる神様を決めてみてください。
名前で呼べる相手ができると、からだとの関係が「使うもの」から「一緒に生きている相手」に変わっていきます。

感謝は、いちばん身近な「おもてなし」

お城に住んでくださっている神様たちにとって、いちばんうれしいのは、城主から気にかけてもらうことではないでしょうか。

特別な道具も、むずかしい修行もいりません。
「今日もいてくださって、ありがとう」。
その一言が、1秒も休まず働いてくださる神様たちへの、いちばん身近なおもてなしです。

あなたの胸とお腹の奥には、名前のある神様たちが、今日もいてくださいます。

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参考:『黄庭内景経』(心神章ほか)、『黄帝内経素問』(宣明五気篇)、『洞玄霊宝自然九天生神章経』。神々の名前の読みは、伝本や注釈書によって異なることがあります。

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