タオの智慧

あなたの身体は、神様たちが暮らすお城。「身神(しんしん)」が居心地のいいお部屋の作り方

この記事でわかること

  • 道教で「身神(しんしん)」と呼ばれる、からだに宿る神々のこと
  • 古い経典『黄庭経』に記された、髪・目・耳・心臓などの神様の名前
  • からだを「神様がいてくださるお城」として見ると、毎日の扱い方がどう変わるか

もし、自分のからだの中に、名前のある神様が住んでいたら。
…なんて、考えたことはありますか。

髪にも、目にも、耳にも。
心臓にも、肺にも、腎臓にも。
それぞれに名前があって、役目があって、今日もあなたのために働いてくださっている。


ちょっと突飛に聞こえるかもしれません。
でも、本気でそう考え、その名前を書き残してきた人たちがいます。
中国の道教です。

前回の記事では、お腹の中の十か月を、天の神々がひと月ずつ見守っていたという経典のお話をしました。 → 私たちが「とつき(十月)」をかけて生まれてきた理由。胎内で始まる10の愛のステップ 今回は、その続きです。
生まれたあと、からだの中には誰がいてくださるのか。
道教の書物に残された「からだの神様たち」を、ひとりずつ訪ねてみます。

※この記事は、道教の考え方を紹介する読みものです。医療の代わりではありません。からだの不調があるときは、医療機関に相談してください。

からだは「神々が暮らすお城」という考え方

身神(しんしん)とは

道教には、人のからだのあちこちに神々が宿っている、という考え方があります。
こうしたからだの神々を「身神(しんしん)」と呼びます。

神様は、遠い天の上や、山の上の社にだけいるのではない。
自分のからだの中にもいてくださる。
これが、道教のからだの見方のいちばんの特徴です。


道教では、からだを「ひとつの国」や「ひとつの宮殿」にたとえることがよくあります。
頭には頭の宮殿があり、胸には胸の宮殿があり、お腹にはお腹の宮殿がある。
それぞれの宮殿に神々が住み、国全体を治めている。
そんなイメージです。

三つの宮殿「三丹田」

からだの中でも、とくに大切な場所として、道教では三つの「丹田(たんでん)」を挙げます。

  • 上丹田(じょうたんでん):頭の中。「泥丸(でいがん)」とも呼ばれる
  • 中丹田(ちゅうたんでん):胸のまんなか
  • 下丹田(げたんでん):おへその下


「丹田」というと、おへその下だけを思い浮かべる方が多いかもしれません。
でも道教では、頭・胸・お腹の三か所に、それぞれ宮殿があると考えてきました。
お城でいえば、天守閣と、本丸と、土台の石垣。
三つがそろって、ひとつのお城が立っています。

『黄庭経』に記された、神様たちの名前

からだの神々の名簿のような経典

からだの神々について、いちばん詳しく書かれている書物のひとつが『黄庭経(こうていきょう)』です。
4世紀ごろにはすでに読まれていたとされる、とても古い経典です。

「黄庭」とは、からだのまんなかにある大切な場所のこと。
この経典は、からだの中の神々を思い浮かべ、その名前を心の中で呼ぶことで、からだと心を整えていく。
そんな修行のために書かれたと伝えられています。

おもしろいのは、神様たちに、ちゃんと名前がついていることです。
ただ「目の神」ではなく、名前で呼ぶ。
まるで、お城に住む人たちの名簿のようです。

顔に住む七柱の神様

『黄庭経』には、顔や頭に住む神々の名前が、こんなふうに並んでいます。

髪蒼華そうか
脳精根せいこん
目明上めいじょう
鼻玉壟ぎょくろう
耳空閑くうかん
舌通命つうめい
歯崿鋒がくほう

髪の神様は「蒼華」。青々とした華やかさ、という響きです。
目の神様は「明上」。明るさの上に立つ方。
耳の神様は「空閑」。からっぽで静かな、という意味の名前です。
音を受け取る耳には、静けさが似合う。
名前を眺めているだけで、昔の人がそれぞれの場所をどう感じていたかが伝わってきます。

胸とお腹に住む、五臓の神様

『黄庭経』には、内臓に住む神々の名前もあります。

宿る場所神様の名前読み
心(心臓)丹元たんげん
肺皓華こうか
肝龍煙りゅうえん
脾常在じょうざい
腎玄冥げんめい

心臓の神様は「丹元」。赤い、いのちのもと。
肺の神様は「皓華」。白く輝く華。
腎の神様は「玄冥」。黒く、深く、静かなもの。

色の響きが入っているのに気づいたでしょうか。
東洋の考え方では、心は赤、肺は白、腎は黒と、五臓にそれぞれの色があるとされます。
神様の名前にも、その色がそっと込められているのです。


脾の神様は「常在」。いつもそこにいる、という名前です。
食べたものから力をつくる脾は、毎日休みなく働いてくれている。
その方を「常にいてくださる」と名づけた昔の人のまなざしが、私はとても好きです。

五臓の神様たちのお話は、次の記事でもう少しくわしく書きます。

「からだの節々すべてに神がいる」

『黄庭経』には、「泥丸百節皆有神(でいがんひゃくせつ、みなかみあり)」という一文があります。
頭の宮殿から、からだのすべての節々にいたるまで、どこにでも神がいる。
そんな意味です。

目や心臓のような大事なところだけではない。
ふだん気にもとめない関節のひとつひとつにまで、神様がいてくださる。
道教のからだの見方は、ここまで徹底しています。

あまねくもりの読み解き:神様がいてくださる家

天生神から、九霊神へ

前回の『九天生神章経』のお話を思い出してください。
お腹の中の十か月、九つの天の神々が、ひと月ずつ気を授けて、いのちを組み立ててくださった。
あまねくもりでは、この神々を「天生神」と呼んでいます。


そして生まれたあと、からだに宿り、いのちを支え続けてくださる神々がいる。
私が学んだ護符の系譜では、この神々を「九霊神」と呼んでいます。
『黄庭経』の身神たちは、その姿を具体的な名前で描いたもの、と私は受けとめています。

生まれる前は、天生神に組み立てられ、生まれたあとは、九霊神に住んでいただいている。
からだは、神々から神々へと受け渡されてきた、ひとつのお城なのです。

お城の主は、あなた

では、このお城の主は誰でしょう。
神様たちでしょうか。

あまねくもりでは、お城の主は「あなた」だと考えています。
神様たちは、あなたのお城に住んで、働いてくださる方々。
城主であるあなたが、どんなお城にするかを決めていく。

城主が夜通し灯りをつけて働き続けたら、神様たちも休めません。
城主が自分を責め続けたら、お城の空気も重くなります。
反対に、城主が「いてくださって、ありがとう」と思えたら、お城の中の空気も変わっていく。
そんなふうに、私は感じています。

名前を知ると、からだの見え方が変わる

神様の名前を知って、私がいちばん変わったと思うのは、からだを「もの」として見なくなったことです。

髪をとかすとき、そこには蒼華さんがいてくださる。
目を閉じるとき、明上さんが休んでいる。
深呼吸をするとき、皓華さんが白い光の中で働いている。

名前で呼べる相手には、乱暴にできません。
人間関係と同じです。
「あの人」より「〇〇さん」のほうが、ずっと近くに感じられる。

だから、全部を覚えなくて大丈夫です。
気になった神様の名前を、ひとつだけ覚えて帰ってください。
目が疲れた日に「明上さん、今日もおつかれさま」。
それだけで、あなたのお城に、ひとつ灯りがともります。

お城の整え方は、これから少しずつ

神様に気持ちよく過ごしていただく方法は、ひとつではありません。
五臓の神様のこと、言葉の響きのこと、手を当てることの意味。
この連載では、ひとつずつ取り上げていきます。

あなたのからだは、ただの入れ物ではありません。
名前のある神様たちが、今日もいてくださるお城です。

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参考:『黄庭内景経』(至道章・心神章)。神々の名前の読みは、伝本や注釈書によって異なることがあります。

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