タオの智慧

「がんばり屋さん」ほど要注意。体の中の神様たちが「もう限界!」とサインを出すとき

この記事でわかること

  • 道教の古典『抱朴子』が説く「養生は、傷つけないことから」という考え方
  • 東洋の古い医学書にある「やりすぎると傷む」5つの見立てと、五臓の神様たち
  • がんばり屋さんが、からだの神様からの合図に気づくためのヒント

「まだ大丈夫」
「私がやらなきゃ」

そう言いながら、気づけば何週間も走り続けている。
がんばり屋さんほど、からだの小さなサインを見落としがちです。

この連載では、からだの中には名前のある神様たちがいてくださる、という道教の考え方を紹介してきました。 → あなたの身体は、神様たちが暮らすお城。「身神(しんしん)」が居心地のいいお部屋の作り方 心には丹元さん、肺には皓華さん、肝には龍煙さん、脾には常在さん、腎には玄冥さん。 → あなたの五臓六腑には、あなたを1秒も休まず生かそうとする神様たちが宿っている

もし、あなたががんばりすぎていたら。
いちばん先に気づくのは、たぶん、この神様たちです。
今回は、神様たちが出してくれる「ちょっといい?」という合図のお話です。

※この記事は、道教や東洋の養生の考え方を紹介する読みものです。医療の代わりではありません。からだの不調があるときは、医療機関に相談してください。

道教の養生は「傷つけない」ことから

『抱朴子』の教え

4世紀の中国に、葛洪(かっこう)という道教の学者がいました。
彼が書いた『抱朴子(ほうぼくし)』という本には、長生きと養生についての考えがたくさん出てきます。

その中に、こんな一文があります。
「養生は、傷つけないことを根本とする」

何か特別なことをする前に、まず、自分を傷つけていることをやめる。
それが養生の土台だ、というのです。

がんばりすぎも「傷」になる

おもしろいのは、『抱朴子』があげる「傷」の中身です。
けがや病気だけではありません。

  • 自分の力では届かないことを、無理に考え続けること
  • 持ち上げられない重さを、無理に持ち上げようとすること
  • 悲しみや心配を、長く抱え込みすぎること
  • 喜びや楽しみでさえ、度を越すこと

こうしたことも、少しずつ自分を傷つけていく、と書かれています。

がんばり屋さんにとっては、耳の痛い話かもしれません。
でも裏を返せば、2千年近く前の人たちも、同じように「がんばりすぎ」で自分をすり減らしていたということ。
それだけ、人がつい陥りやすいことなのだと思います。

やりすぎると、五臓の神様が疲れていく

「五労」という古い見立て

東洋の古い医学書『黄帝内経(こうていだいけい)』には、「同じことを長く続けすぎると、からだのどこかが傷む」という見立てがあります。

長く続けすぎること疲れやすいとされるもの関わりの深い五臓
見つづける血心・肝
横になりつづける気肺
座りつづける肉脾
立ちつづける骨腎
歩きつづける筋肝

今の私たちに当てはめると、スマホやパソコンを見つづける、座りっぱなしで働きつづける、といったところでしょうか。
昔の人は、ひとつのことを長く続けすぎること自体が、からだへの負担になると考えていました。

神様たちからの「ちょっといい?」

あまねくもりでは、こうした小さな疲れのサインを、からだの神様たちからの「ちょっといい?」という合図だと受けとめています。

たとえば、こんな合図です。

  • 目がしょぼしょぼして、ピントが合いにくい。目とつながる肝の神様「龍煙」さんが、「少し休もう」と言っているのかもしれません。
  • 考えごとが頭から離れず、食事の味がしない。考える力をしまう脾の神様「常在」さんが、「もういっぱいだよ」と知らせているのかもしれません。
  • 気づくと、ため息ばかりついている。呼吸の神様、肺の「皓華」さんが、「ちゃんと吐かせて」と合図しているのかもしれません。
  • 夜になっても気持ちが静まらない。心の神様「丹元」さんが、「今日はここまで」と声をかけているのかもしれません。
  • 底のほうから、なんとなく力が出ない。いのちの力をたくわえる腎の神様「玄冥」さんが、「たくわえを使いすぎているよ」と教えてくれているのかもしれません。

これは診断ではなく、あくまで東洋の見立てを借りた「受けとめ方」のひとつです。
痛みや症状が続くときは、合図として受けとめるだけでなく、医療機関で診てもらってください。

あまねくもりの読み解き:合図は、神様たちの思いやり

がんばり屋さんの城主と、神様たち

からだをお城にたとえると、がんばり屋さんは、とても働き者の城主です。
朝から晩まで門を開けっぱなしにして、外からの頼まれごとを、全部引き受けてしまう。

お城の中の神様たちは、その城主を支えようと、いつも以上に働いてくださいます。
でも、神様たちにも限りがあります。
少し休まないと、お城がまわらなくなる。
そこで、小さな合図を出してくれる。

そう考えると、合図は「あなたはダメだ」という叱責ではありません。
「ここまで、よくがんばったね。そろそろ一緒に休もう」という、神様たちの思いやりです。

合図に気づいたら、お城の門を少し閉める

がんばり屋さんほど、合図に気づいても「休んだら迷惑がかかる」と、さらに外へ力を出そうとします。

そんなときは、少しの時間だけ、お城の門を閉めてみてください。
スマホを伏せる。
予定をひとつだけ、あとに回す。
頼まれごとに、「今日は難しいです」と言ってみる。

『抱朴子』の言葉を借りれば、これは「傷つけない」ための、立派な養生です。
何かを足すより、まず、すり減らすことをひとつ減らす。

名前を呼んで、ひと言かえす

合図をもらったら、神様たちに、ひと言かえしてみてください。

「龍煙さん、教えてくれてありがとう。今日は早めに画面を閉じます」
「常在さん、考えすぎてたね。いったん置いておくね」

声に出さなくても、心の中でかまいません。
合図を無視するのではなく、受け取ったよ、と返事をする。
それだけで、からだと自分のあいだに、小さな信頼が生まれていきます。

がんばり屋さんのあなたが、少し立ち止まれたら。
いちばんほっとするのは、きっと、ずっとそばで働いてくださっていた神様たちです。

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参考:『抱朴子』内篇 極言篇、『黄帝内経素問』宣明五気篇(五労所傷)、『黄庭内景経』。五臓と目・口・鼻などの対応は東洋医学の考え方による。

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