異界とのおつきあい

異界との共生。銀色のお狐さんと、眠る龍と、ご近所づきあい|異界とのお付き合い作法 第5話(最終回)

この記事でわかること

  • わが家のまわりにいる「ご近所さん」たち
  • 人に姿を変える狐の言い伝え「葛の葉」
  • 異界との共生は、ご近所づきあいと同じだということ

見えない存在の気配は、意外と、暮らしのすぐとなりにあります。

わが家では、「また来てるよ〜」なんて、ちょっとした世間話のように異界のことを口にすることもあります。
長女は座敷童ちゃんとよく遊んでいるし、夫は帰ってくるなり「玄関、にぎやかやなぁ」なんて言ったり。
わたしは、スープをよそいながら「あぁ、またご近所さんが寄ってきてるな」と思う。

連載の最終回は、そんな見えないご近所さんたちとの、「共生」のお話です。

わが家の、見えないご近所さん

銀色の、大きなお狐さん

ときどき出会うのが、大きな銀色のお狐さんです。
ふいにあらわれて、しばらくすると、すっといなくなる。

毎回会えるわけではないので、なかなかレアなご近所さんです。
わたしはひそかに、昼間は人の姿になって、どこかでふつうに暮らしているんじゃないかと思っています。
どこかですれちがっていても、きっと気づかないんだろうな。

お寺の土地の下で眠る龍

もうひとり(一柱?)は、お寺の土地の下で眠っている龍さんです。
起きて動きまわるわけではなく、ずっと静かに眠っている。
でも、その土地に足を運ぶと、「あ、今日もいるな」とわかる。そんな存在です。

龍というと、空を飛びまわる姿を思い浮かべるかもしれませんが、こうして土地の下で眠りながら、その場所を見守っている龍もいるのです。

昔から、こう伝わっています

人に姿を変える狐「葛の葉」

狐が人の姿になる話は、日本の昔話にたくさん残っています。
なかでも有名なのが、「葛の葉(くずのは)」の伝説です。

助けられた白狐が、葛の葉という女性の姿になって、助けてくれた男性と結ばれ、子どもを育てます。
その子どもが、のちに平安時代の陰陽師として知られる安倍晴明になった、と伝えられています。
正体を知られた葛の葉は、「恋しくば 尋ね来て見よ 和泉なる 信太の森の うらみ葛の葉」という歌を残して、森へ帰っていきました。

人の姿で人の暮らしにまじり、ときどき本当の姿を見せる。
わが家の銀色のお狐さんも、昼間はそんなふうに暮らしているのかもしれません。

狐は、お稲荷さんのお使いとして、田畑や商売を守る存在としても大切にされてきました。
昔から、狐は人のすぐ近くで暮らす、見えない世界の住人だったのですね。

共生は、ご近所づきあいと同じ

もちろん、すべての存在を歓迎するわけではありません。
空気をざわつかせるものとは、第4話でお話ししたように、静かに距離をとります。
でも、ただ通りすぎていく気配や、そっと寄りそってくれる存在なら、「またどうぞ〜」と気楽に受けとめる。

こうして書いてみると、異界との共生は、人どうしのご近所づきあいとよく似ています。

  • 会ったら、軽くあいさつをする
  • 相手の暮らしに、ずかずか踏みこまない
  • 合わない人とは、ほどよい距離をたもつ
  • 困ったときは、おたがいさま

特別な儀式やむずかしい作法がなくても、あいさつと、ほどよい距離があれば、見えないご近所さんとも、ちゃんとうまくやっていけるのです。

暮らしのなかの、小さなやりとり

わが家で大切にしているのは、こんなことです。

  • 子どもが「なんか変な感じ〜」と言ったら、「大丈夫、うちは安心だよ」と返す
  • 家族が笑ってワイワイしていると、不思議と空気がやわらぐ
  • 「ありがとう」「おかえり」と声をかけるだけで、場が整う

こういう何気ないやりとりこそが、異界との関係をあたたかくしてくれる、いちばんの鍵なのだと思います。

こわいものから、暮らしの彩りへ

第1話の家鳴りの夜、わたしはたしかにこわい思いをしました。
でも、あの夜があったから、身を守る作法を覚え、家族と空気を整え、合うものと合わないものとの付き合い方を学ぶことができました。

今では、見えない存在がすぐそばにいても、「こわい」より「ちょっとした暮らしの彩り」。
くすっと笑いながら付き合える、ご近所さんのような存在になっています。

暮らしのなかで、自然にやりとりしていくこと。
それが、あまねくもりの「異界とのお付き合い作法」の、いちばん大切なところです。

ここまで読んでくださって、ありがとうございました。
あなたのまわりにも、まだ気づいていない見えないご近所さんが、いるかもしれませんね。

見えない世界と、暮らしのなかで付き合っていく仲間と

ガイアのむすひは、季節や土地、ことばや見えない世界とのつながりを、暮らしのなかで少しずつ取り戻していく、あまねくもりの月額の学びの場です。こわがるのでも、特別扱いするのでもなく、ご近所づきあいのように見えない世界と付き合っていく。そんな感覚を、仲間と一緒に育てていきませんか。

ガイアのむすひについて

「異界とのお付き合い作法」全5話

第1話 連れて帰ってきちゃった? 夫の足もとにいた「なにか」と、家鳴りの夜
第2話 身を守るために。火打石、水の流れ、見えない線
第3話 家族を守る。長女と座敷童ちゃん、ワイワイうるさい家の結界
第4話 お付き合いの心得。合わないものは「いないもの」にする
第5話 異界との共生(この記事)

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参考:『日本大百科全書(ニッポニカ)』「葛の葉」「稲荷信仰」(コトバンク)

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