タオの智慧

鏡の中の自分へ語りかける魔法。タオ(道)が教える、最も簡単で最も深い「内観」の習慣

この記事でわかること

  • 道教の『内観経(ないかんきょう)』が説く「内観」という養生の考え方
  • 道教で銅鏡が「本当の姿を映すもの」として大切にされてきたこと
  • 毎朝の鏡を、顔にいてくださる神様たちへのあいさつの時間に変える方法

朝、洗面台の鏡に向かうとき。
あなたは、何を見ていますか。

髪がはねていないか。
肌の調子はどうか。
「あ、またクマができてる」

たぶん多くの人が、鏡で見ているのは「外見のチェック項目」です。
鏡の向こうの「自分」とは、意外と目を合わせていません。

新しい年のはじめに、毎朝の鏡の時間を、少しだけ変えてみませんか。
道教に伝わる「内観」と、からだの神様たちのお話から、そのヒントをお届けします。

※この記事は、道教の考え方を紹介する読みものです。医療の代わりではありません。心やからだの不調が続くときは、医療機関に相談してください。

道教の「内観」

外ばかり見ている目を、内側へ

道教には、『太上老君内観経(たいじょうろうくんないかんきょう)』という経典があります。
名前のとおり、「内観」――自分の内側を見つめることを説いた経典です。

私たちの目は、ふだん外の世界ばかり見ています。
人の顔色、スマホの画面、やることのリスト。
内観とは、その目を、たまには内側に向けてみること。
自分の心が今どうなっているか、自分のからだの中に誰がいてくださるかを、静かに見つめることです。

内観経にも書かれた、十か月の物語

おもしろいことに、この『内観経』にも、お腹の中の十か月の話が出てきます。
ひと月目に包みができ、三月目に魂が宿り、五月目に五臓が分かれ…と、シリーズ第1回でご紹介した『九天生神章経』とよく似た流れです。 → 私たちが「とつき(十月)」をかけて生まれてきた理由。胎内で始まる10の愛のステップ


つまり内観とは、ただ心を落ち着けることではなく、
「自分がどうやって組み立てられ、今ここにいるのか」を思い出すことでもあるのです。
天生神が十か月かけて組み立てたいのちを、内側から眺めなおす。
それが、道教の内観の奥行きだと私は感じています。

道教と鏡

鏡は「本当の姿」を映すもの

道教では、鏡はとても大切な道具でした。

4世紀の道教の書物『抱朴子(ほうぼくし)』には、修行者が山に入るとき、背中に明るい鏡を掛けていく話が出てきます。
鏡には、ものの本当の姿が映る。
だから、姿を変えて近づいてくるものも、鏡の前ではごまかせない。
そう考えられていたのです。

日本でも、神社の奥に鏡が祀られているのを見たことがあるかもしれません。
鏡を、ただの身だしなみの道具ではなく、本当のものと向き合うためのものとして見る感覚は、私たちの文化にも深く根づいています。

鏡の中にも、神様たちがいてくださる

では、毎朝の鏡に映っている「本当の姿」とは、何でしょう。

道教の経典『黄庭経(こうていきょう)』によれば、顔にはたくさんの神様がいてくださいます。
→ あなたの身体は、神様たちが暮らすお城。「身神(しんしん)」が居心地のいいお部屋の作り方

場所神様の名前
髪蒼華(そうか)
目明上(めいじょう)
鼻玉壟(ぎょくろう)
耳空閑(くうかん)
舌通命(つうめい)

鏡に映っているのは、「チェックする対象」ではなく、この神様たちが住んでくださっているお城の正面玄関。
そう思うと、鏡の前の時間の意味が、少し変わってきます。

あまねくもりの読み解き:鏡は、内観の入口

ダメ出しは、神様たちへの「今日も不合格」

あまねくもりでは、毎朝の鏡を、この内観の入口として使うことをおすすめしています。

外見のチェックは、ダメ出しになりがちです。
「またシミが増えた」「疲れた顔してる」
それは、毎朝お城の神様たちに「今日も不合格です」と伝えているようなものかもしれません。

目の下のクマは、明上さんが昨日たくさん働いてくれたしるし。
白髪が増えたのは、蒼華さんと一緒に年を重ねてきたしるし。
そう見方を変えるだけで、鏡の中の自分への言葉が、少しやわらかくなります。

目の奥にいる、もうひとりの自分

『内観経』では、からだの中心にいるのは「心」だと説かれます。
心には、心の神様「丹元(たんげん)」さんがいてくださいます。
→ あなたの五臓六腑には、あなたを1秒も休まず生かそうとする神様たちが宿っている

鏡で自分の目の奥を見つめるとき、私たちは、顔の神様たちの向こうにいる、心の神様と目を合わせているのかもしれません。
あまねくもりでは、そんなふうに受けとめています。

服の前に、1分の鏡のあいさつ

明日の朝、外見のチェックを始める前に、試してみてください。

  1. 鏡に映る自分の目の奥を、30秒ほど見ます。髪や肌ではなく、目の奥です。
  2. 顔の神様たちに、ひとことずつあいさつします。「蒼華さん、明上さん、今日もよろしくおねがいします」
  3. 最後に、目の奥の自分に。「今日も一緒に生きてくれて、ありがとう」


最初は照れくさいと思います。
目をそらしたくなったら、そらしても大丈夫です。
それでも続けていると、鏡の前の時間が、少しずつ変わっていきます。

ダメ出しより、あいさつを

外見を整えるのは、そのあとでかまいません。
最初のひと言が、ダメ出しか、あいさつか。
それだけで、一日の始まり方がちがってきます。

道教の人たちが、本当の姿を映すものとして大切にした鏡。
そこに映っているあなたの本当の姿は、天生神に組み立てられ、神様たちに住んでいただいている、ひとつのお城です。
今年はそのお城に、毎朝あいさつをしてみませんか。

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参考:『太上老君内観経』、『抱朴子』内篇 登涉篇(明鏡)、『黄庭内景経』至道章。

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