タオの智慧

生まれる前から、あなたは守られていた。天生神が授けた「三つの魂」のお話

この記事でわかること

  • 道教でいう「三魂七魄(さんこんしちはく)」と、三つの魂の名前
  • 胎内の三か月目、天生神から魂が授けられるという経典の物語
  • 人の空気に疲れた日に思い出したい、「守られている」ことの原点

「今日の職場、ピリピリしてて息が詰まった」
「あの人の不機嫌を、まともに浴びちゃった」

人の空気に敏感な人ほど、帰り道にはくたくたです。
自分の身は自分で守らなきゃ、と身構える。
でも、身構え続けるのもまた、疲れるものです。

道教の物語には、ちょっとほっとする話があります。
私たちは、自分で自分を守ろうとするずっと前、まだお母さんのお腹の中にいたころから、すでに守られていた。
今日は、そのはじまりにある「三つの魂」のお話です。

※この記事は、道教や東洋の考え方を紹介する読みものです。医療の代わりではありません。からだの不調があるときは、医療機関に相談してください。

「魂」はひとつではない? 道教の三魂七魄

日本語にも残る「魂魄」

「魂魄(こんぱく)」という言葉を、時代劇や昔話で聞いたことがあるかもしれません。
じつはこの言葉、もとは道教や中国の古い考え方から来ています。

道教では、人の中には「魂(こん)」と「魄(はく)」という二種類のものが宿っていると考えます。
魂は、天の気につながる軽やかなもの。
魄は、からだや大地につながる、重みのあるもの。
そして、魂は三つ、魄は七つある。
これを「三魂七魄(さんこんしちはく)」と呼びます。

人が亡くなると、魂は天へ、魄は地へと還っていく。
そんなふうに説明されることもあります。
私たちは、天のものと地のものを、両方あわせ持って生きている、というわけです。

三つの魂の名前

三つの魂には、それぞれ名前があります。
道教の書物を集めた『雲笈七籤(うんきゅうしちせん)』などに、こう記されています。

名前読みどんな魂か(よく説明される内容)
胎光たいこういのちの光そのもの。三つの中でいちばん天に近い、清らかな魂
爽霊そうれい考える力、感じる力など、心のはたらきにかかわる魂
幽精ゆうせいからだの奥で、本能や情のはたらきにかかわる魂

説明のしかたは書物や解説によって少しずつちがいますが、三つがそれぞれちがう役目を持って、ひとりの人の中にいる、という点は共通しています。

名前を見ているだけでも、なんだかやさしい響きです。
「胎光」には「胎」の字、つまり、お腹の中のいのちを思わせる字が入っています。

七つの魄も、からだを守っている

三つの魂といっしょに語られる「七魄」は、からだの側にいて、からだそのものを支えるはたらきとされます。
『雲笈七籤』には、七つの魄にもそれぞれ名前が記されています。

魂が天の側からいのちを照らすなら、魄は地の側からからだを支える。
眠っているあいだに息を続け、心臓を動かし、体温を保つ。
意識しなくても続いていく、からだの営みに近いはたらきです。

三つの魂と七つの魄。
天のものと地のものが、ひとりの人の中で手を取り合っている。
道教は、人をそんなふうに見つめてきました。

魂は、胎内の三か月目に天から届く

『九天生神章経』の三か月目

シリーズ第1回でご紹介した『九天生神章経(きゅうてんせいしんしょうきょう)』を思い出してください。 → 私たちが「とつき(十月)」をかけて生まれてきた理由。胎内で始まる10の愛のステップ お腹の中の十か月を、九つの天の神々がひと月ずつ見守る経典です。
あまねくもりでは、この神々を「天生神」と呼んでいます。

この経典とその注釈では、いのちが組み立てられていく順番が語られています。
1か月目に、いのちを包む「胞(ほう)」。
2か月目に「胎(たい)」。
そして3か月目に、天から「三魂」が届く。
4か月目には「七魄」がそろいます。

五臓がそろうのは、そのあとの5か月目。
つまり、心臓や内臓ができあがるより先に、魂が授けられている、ということになります。

からだより先に、守りが届いた

日本では、家を建てる前に「地鎮祭(じちんさい)」をします。
柱を一本立てるより先に、その土地の神様にごあいさつをして、これから建つ家を見守ってくださいとお願いする。

天生神のいのちの組み立て方も、少し似ています。
からだのかたちがまだはっきりしないうちに、まず魂を迎え入れる。
そのあとで、内臓やからだのしくみを整えていく。

守りは、からだができあがってから後づけされたものではなく、いちばん最初の段階から、いのちの中に入っていた。
経典の順番を追っていくと、そんなふうに読めてきます。

三つの魂は、夜も見守っている

「拘三魂(こうさんこん)」という古い作法

『雲笈七籤』には、三つの魂にまつわる、ちょっと不思議な作法が伝えられています。

毎月三日・十三日・二十三日の夜は、三つの魂が落ち着かず、からだから離れやすい。
だからその夜は、静かに横になって三つの魂の名前を心で呼び、からだにとどまってくださいと願う。
「拘三魂法(こうさんこんほう)」と呼ばれる作法です。
細かな手順は、書物によって少しずつちがいます。

魂は「持ちもの」ではなく、迎えているもの

この作法から見えてくるのは、昔の人が魂を、自分の持ちものとしてではなく、からだにとどまっていただく大切な存在として扱っていた、ということです。

名前を呼び、ていねいにお願いする。
それは、お客さまや神様に向ける態度とよく似ています。
からだを「自分の所有物」と考えない東洋の見方については、こちらでも書いています。 → 【東洋の身体論】自分の体を「自分の所有物」だと思っていませんか?

あまねくもりの読み解き:守りは、内側から始まっている

壁をつくる前に、思い出すこと

人の空気に疲れたとき、私たちはつい、外に向けて壁をつくろうとします。
もっと強くならなきゃ、もっと気にしないようにしなきゃ、と。

でも三魂の物語は、守りが「外の壁」としてではなく、「内側にいてくださる方々」として始まったことを語っています。

胎光は、どんなに曇った日にも消えない、いのちの光。
爽霊は、人の機嫌に引っぱられても、自分の感じ方を自分のものとして保つ力。
幽精は、からだの奥で、生きようとする力を支えるはたらき。

だれかの不機嫌を浴びて心がざわついても、三つの魂は、それぞれの場所であなたを見守っていてくださる。
あまねくもりでは、そう受けとめています。

人の空気に疲れやすいのは、感じる力がある証

人の機嫌や場の空気に敏感なのは、弱いからではありません。
三つの魂の言葉でいえば、爽霊、つまり感じる力がよくはたらいているということでもあります。

ただ、感じる力が強い人ほど、外から入ってきたものを、自分のもののように抱えこんでしまいがちです。
だれかの不機嫌を、まるで自分のせいのように感じてしまう。
そんなときは、「これは私の魂の声だろうか、それとも外から来たものだろうか」と、ひと呼吸おいて分けてみる。
三つの魂の名前を知っていると、その区別が少しつけやすくなります。

三つの名前を呼ぶ、夜の小さな習慣

拘三魂法をもとにした、あまねくもりの小さな習慣をご紹介します。
経典の作法そのものではなく、毎日の暮らしに取り入れやすくした形です。

  1. 寝る前に灯りを落とし、楽な姿勢で横になります。
  2. 心の中で「胎光さん、爽霊さん、幽精さん」と、三つの名前をゆっくり呼びます。
  3. 「今日もいてくださって、ありがとうございます」と伝えます。
  4. 人の空気を浴びた日は、「外から来たものは、外へお返しします。ここは、みなさんのお部屋です」と添えます。

毎月三日・十三日・二十三日の夜に、とくにていねいに呼んでみるのもおすすめです。

守られていたことを、知っているだけでいい

三つの魂は、何かを頑張ったごほうびとして授けられたものではありません。
まだ心臓も手足もそろわない、胎内の三か月目に、天から届いていたものです。

外の空気に振り回された日も、自分がちっぽけに思える日も、そのことは変わりません。
戦って勝ち取る守りではなく、思い出すだけでいい守り。
そういう守りが、あなたの中にはじめからある。
そのことを、ときどき思い出してもらえたらうれしいです。

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参考:『洞玄霊宝自然九天生神章経』とその注釈、『雲笈七籤』(魂神の巻:三魂七魄、拘三魂法)。三魂の役割の説明は一般的な解説による。夜の習慣は、拘三魂法をもとにしたあまねくもりのアレンジです。

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