タオの智慧

お腹の中で灯った24の明かり。天生神の八か月目「八景・二十四神」のお話

この記事でわかること

  • 道教でいう「八景(はっけい)」と「二十四神(にじゅうししん)」のこと
  • 胎内の八か月目に、からだの上・中・下に神様の明かりがそろうという物語
  • 「からだに、灯りの消えた部屋はない」という、あまねくもりの読み解き

なんとなく、自分がからっぽに感じる夜があります。
がんばったのに手ごたえがない。
人と話したのに、どこか満たされない。

そんなとき、道教のこんな見方を思い出してみてください。
あなたのからだには、どこにも「誰もいない場所」がない。
頭にも、胸にも、お腹にも、神様の明かりがともっている。

今日は、胎内の八か月目にそろうという「二十四の明かり」のお話です。

※この記事は、道教や東洋の考え方を紹介する読みものです。医療の代わりではありません。からだの不調があるときは、医療機関に相談してください。

「八景」は、からだに灯る八つの光

「景」は、光をあらわす字

「八景」と聞くと、「近江八景」のような景色の名所を思い浮かべる人が多いかもしれません。

でも「景」という字は、「日」と「京」からできていて、もとは日の光や、光が照らすさまをあらわす字です。
古い中国の言葉では、「景」は「光」「かがやき」という意味でも使われました。

道教のなかでも、とくにからだの神々を大切にした流れ(上清派と呼ばれます)では、からだに住む神々を光としてとらえました。
そして、神々を八つずつの組にして「八景」と呼んだのです。
八景とは、からだに灯る八つの光、というわけです。

上・中・下、三つの部屋に八つずつ

道教では、からだを大きく三つの部分に分けて考えます。
頭の「上部」、胸の「中部」、お腹の「下部」。
この三つの部屋それぞれに八景、つまり八柱の神様がいて、あわせて二十四柱。
これが「二十四神」です。

  • 上部八景:脳、髪、皮膚、目、うなじ、背骨、鼻、舌など、頭と顔のまわり
  • 中部八景:のど、肺、心、肝、胆、左右の腎、脾など、胸のあたり
  • 下部八景:胃、腸、おへそのまわり、わき腹など、お腹のあたり

どの神様をどこに数えるかは、書物によって少しずつちがいます。
ただ、頭から足もとまで、からだのすみずみに持ち場を分けて神様がいる、という考え方は共通しています。

からだを上・中・下の三つの宮に分ける見方は、シリーズでご紹介した「三丹田」ともよく重なります。 → あなたの身体は、神様たちが暮らすお城。「身神(しんしん)」が居心地のいいお部屋の作り方

なぜ「八」なのか

中国の古い考え方では、「八」は四方八方、つまり、あらゆる方向をあらわす数でもあります。
易の「八卦(はっけ)」も、世界のすべてを八つのかたちで言いあらわそうとしたものでした。

八つの光がそろうということは、その部屋のあらゆる方向が照らされる、ということ。
頭の部屋も、胸の部屋も、お腹の部屋も、すみずみまで明るい。
八景という呼び名には、そんな願いもこめられているように感じます。

八か月目、二十四の明かりがそろう

『九天生神章経』の八か月目

シリーズ第1回でご紹介した『九天生神章経』では、お腹の中の十か月を、九つの天の神々、あまねくもりでいう「天生神」が、ひと月ずつ見守ります。 → 私たちが「とつき(十月)」をかけて生まれてきた理由。胎内で始まる10の愛のステップ

その注釈によると、7か月目には目や耳などの七つの穴が開きます。 → 顔の「7つの穴」と、からだに隠れた「10番目の門」のミステリー そして8か月目に、からだの中に「八景」がそろい、二十四の神様が持ち場につく。
9か月目には、からだじゅうの数えきれない神々がそろって、10か月目に気が満ちて生まれてくる。
そう語られています。

窓が開いたあとに、明かりが灯る

家づくりにたとえると、わかりやすいかもしれません。

土台ができて、柱が立ち、部屋がそろう。
7か月目に窓が開いて、外の光や音が入るようになる。
そして8か月目、ひと部屋ずつに明かりが灯っていく。
だれもいない部屋が、ひとつもなくなる。

いのちの設計図を十か月の工程表として見ると、八か月目は「住む人がそろい、家じゅうに灯りがともる月」と言えそうです。 → 自分を嫌いになりそうな夜に。天生神(てんせいしん)があなたをデザインした時の最初の設計図

二十四の神様は、それぞれの持ち場にいる

名前と、衣の色まで

道教の書物には、二十四の神様それぞれに名前があり、背丈や衣の色まで記されているものもあります。

道教の修行者は、こうした神様の姿を、一柱ずつ心の中に思い描きました。
「存思(ぞんし)」と呼ばれる方法です。
神様の姿を思い描き、その神様がからだのその場所にいてくださることを、ていねいに確かめていく。
からだを、神様たちとともに暮らす場として見つめなおす時間でもありました。

『黄庭経』の神様たちとの関係

シリーズでは、『黄庭経(こうていきょう)』に出てくる顔の神様や、五臓の神様の名前もご紹介してきました。 → あなたの身体は、神様たちが暮らすお城。「身神(しんしん)」が居心地のいいお部屋の作り方、あなたの五臓六腑には、あなたを1秒も休まず生かそうとする神様たちが宿っている

二十四神は、それとは少し系統のちがう書物に出てくる神様たちです。
名前や数え方はちがっても、「からだのあちこちに、それぞれ神様がいてくださる」という見方は同じ。
道教には、からだの神々を語る流れがいくつもあって、それぞれがからだを「神様の住まい」として大切にしてきました。

あまねくもりの読み解き:からだに、灯りの消えた部屋はない

「ここには誰もいない」と感じる日に

疲れて、からだのどこにも力が入らない日。
自分のからだの一部を、どうしても好きになれない日。
そんな日は、自分の中がからっぽで、暗く感じるかもしれません。

でも二十四神の物語では、八か月目にそろった明かりは、からだのすみずみに灯っています。
あなたが気づいていない場所にも、好きになれない場所にも、ちゃんと神様がいてくださる。
あまねくもりでは、そう受けとめています。

明かりは、あなたが調子のいい日にだけ灯るものではありません。
眠っているあいだも、落ちこんでいる日も、ずっと灯り続けている。
そう思うと、自分のからだが、少しだけ心強い場所に感じられてきます。

二十四の明かりを、上から順にめぐる

存思をもとにした、あまねくもりのイメージの時間です。
経典の作法そのものではなく、寝る前などに気軽にできる形にしています。

  1. 目を閉じて、頭のてっぺんに、やわらかな明かりがひとつ灯るのを思い浮かべます。
  2. 頭から顔のまわりへ、ひとつ、またひとつと、八つの明かりが灯っていきます。「上の八つの明かり、ありがとうございます」
  3. のどから胸へ、八つの明かりが灯っていきます。「まんなかの八つの明かり、ありがとうございます」
  4. お腹のまわりへ、八つの明かりが灯っていきます。「下の八つの明かり、ありがとうございます」
  5. 最後に、二十四の明かりがからだじゅうにともっているのを、しばらくながめます。

数をきちんと数えなくても大丈夫です。
上から下へ、明かりがひとつずつ灯っていく感覚を味わってみてください。

明かりは、となりの人の中にも

二十四の明かりは、あなたの中だけにあるわけではありません。
家族の中にも、職場のあの人の中にも、同じように灯っています。

人にいらだったり、わかりあえないと感じたりする日もあります。
そんなとき、「この人のからだにも、二十四の明かりがともっているんだな」と思い出してみる。
それだけで、相手を見るまなざしが、ほんの少しやわらぐことがあります。
自分の明かりを大切にすることと、人の明かりを大切にすることは、きっと同じところにつながっています。

八か月目から、ずっと灯っている

あなたが生まれる二か月前、まだお母さんのお腹の中にいたころに、二十四の明かりはそろいました。
それから今日まで、その明かりは一度も消えずに、あなたのからだを照らし続けています。

からっぽに感じる夜も、あなたは一人きりではありません。
からだのすみずみに、二十四の神様がいてくださる。
そのことを、明かりの数だけ思い出してもらえたらうれしいです。

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参考:『洞玄霊宝自然九天生神章経』とその注釈、上清派の二十四神(八景)に関する書物(『雲笈七籤』所収のものなど)。部位の割り振りや名前は書物によって異なる。明かりのイメージは、存思をもとにしたあまねくもりのアレンジです。

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