タオの智慧

眠っているあいだも、からだを守ってくれるのは誰? 胎内の4か月目に宿る「七つの魄(はく)」

この記事でわかること

  • 「魄(はく)」という字の意味と、日本語に残るその名残り
  • 胎内の4か月目、天生神から「七つの魄」が授けられるという道教の物語
  • 眠っているあいだも、からだの側でいのちを守っている「七つの守り」という見方

ぐっすり眠れた朝、からだがふっと軽くなっていることがあります。

眠っているあいだ、私たちの意識はどこか遠くへ行っています。
それでも心臓は脈を打ち、息は続き、体温は保たれている。
昼間につくった小さな傷も、朝には少しふさがりかけている。

いったい、だれがからだを守ってくれていたのでしょう。

道教には、この問いにやさしく答える言葉があります。
それが「魄(はく)」です。
今日は、生まれる前の4か月目に授けられるという「七つの魄」のお話です。

※この記事は、道教や東洋の考え方を紹介する読みものです。医療の代わりではありません。からだの不調があるときは、医療機関に相談してください。

「魄」という字が教えてくれること

気迫の「迫」は、もとは「魄」


「魄」という字は、ふだんあまり見かけないかもしれません。
でも実は、身近な言葉の中に隠れています。

たとえば「気迫」。
これはもともと「気魄(きはく)」と書かれていた言葉です。
からだの底から湧いてくる、押されても負けない力。
それが「魄」のイメージに近いものです。

ほかにも、からだつきのことを「体魄(たいはく)」と言ったり、「魂魄(こんぱく)」と魂と並べて言ったりします。
魄は、どれも「からだ」や「からだの底力」と結びついて使われてきました。

魄は、月の「光っていない部分」

もうひとつ、おもしろい話があります。
古い中国では、「魄」は月の光っていない部分、暗く見えている部分を指す字でもありました。


三日月の夜、よく見ると、光っていない部分の丸い輪郭がうっすら見えることがあります。
光っているところだけが月ではなく、影の部分もちゃんと月の一部。
その影の部分が「魄」です。

道教では、天につながる軽やかな「魂」を光に、からだにつながる「魄」を影にたとえることがあります。
光と影がそろって、ひとつの月になる。
人もまた、魂と魄がそろって、ひとりの人になるのです。

胎内の4か月目、天生神が授ける七つの守り

三魂の翌月にそろう、七つの魄

シリーズ第1回でご紹介した『九天生神章経(きゅうてんせいしんしょうきょう)』では、お腹の中の十か月を、九つの天の神々がひと月ずつ見守ります。
あまねくもりでは、この神々を「天生神」と呼んでいます。
→ 私たちが「とつき(十月)」をかけて生まれてきた理由。胎内で始まる10の愛のステップ

この経典とその注釈では、3か月目に天から「三魂」が届き、その翌月の4か月目に「七魄」がそろうと語られます。
三魂のお話は、こちらで書きました。
→ 生まれる前から、あなたは守られていた。天生神が授けた「三つの魂」のお話


注釈では、七魄は「陰の神」として降りてきて、からだを静かに守ると説かれます。
天から授かった魂が、いのちの光だとしたら。
七魄は、そのいのちが宿るからだを、内側から支える守り手です。

魂は天へ、魄は地へ

道教では、魂と魄はとても対照的なものとして語られます。

三魂七魄
授かる月3か月目4か月目
つながる先天地(大地・からだ)
性質軽やか、動く重みがあり、静か
たとえ月の光月の影
からだの中でしまわれる場所肝肺

七つの魄にも、それぞれ名前が伝わっています。
ただ、名前を覚えることより大切なのは、「からだの側にも、守り手がいてくださる」という見方そのものです。
この記事では、七つの名前ではなく、七つの守りのはたらきに目を向けていきます。

人が一生を終えると、魂は天へ、魄は地へと還っていく。
そう説明されることもあります。
魄は、最後まで、からだと大地に寄り添っている守り手なのです。

肺は、魄の住まい

東洋の古い医学書『黄帝内経(こうていだいけい)』には、「肺は魄をしまう」と書かれています。

肺には、肺の神様「皓華(こうか)」さんがいてくださいます。
白く輝く華、という名前の神様です。
その肺に、からだを守る七つの魄がしまわれている。
息をするたびに、魄の住まいがふくらんだりしぼんだりしている。
そう思うと、呼吸がまた少しちがって感じられます。
→ あなたの五臓六腑には、あなたを1秒も休まず生かそうとする神様たちが宿っている

眠っているあいだも、からだを守っているもの

魂が夢を見ているあいだに

昔の人は、眠っているあいだ、魂はふわりと遠くへ出かけて夢を見ている、と考えることがありました。
では、魂が出かけているあいだ、からだはだれが守っているのか。

そこで語られるのが、魄です。
魂が夢の中を旅しているあいだも、魄はからだにとどまって、いのちの営みを支え続けている。
そんなふうに説明されることがあります。

意識しなくても続いていく営み

息を吸って、吐く。
心臓が脈を打つ。
体温が保たれる。
まばたきをする。
食べたものが少しずつ、からだの力に変わっていく。

どれも、私たちが「よし、やろう」と決めなくても続いています。
今の言葉でいえば、からだのしくみのはたらきです。
道教は、そこに「魄」という守り手の姿を重ねてきました。

眠っているあいだも続く呼吸については、こちらでも書いています。
→ 生きているだけで、あなたはすでに宇宙のバックアップシステムと24時間繋がっている

あまねくもりの読み解き:からだは、守り手のいる家

からだは、魂の「入れもの」ではない

「からだは魂の入れもの」という言い方を聞くことがあります。
でも七魄のお話を知ると、からだはただの入れものではないことに気づきます。

入れものなら、中身がいないあいだは空っぽです。
けれど、魂が夢の旅に出ているあいだも、からだには七つの守り手が残って、いのちを支えている。
からだは、それ自体に守り手のいる家なのです。

天からの魂だけが大事で、からだは道具。
そうではなく、からだの側にも、天生神から授かった守り手がいてくださる。
あまねくもりでは、そう受けとめています。
からだを「自分の持ちもの」とせず、預かりものとして見る見方は、こちらでも書きました。
→ 【東洋の身体論】自分の体を「自分の所有物」だと思っていませんか?

頭ばかり使う日に、思い出したいこと

考えごとが続く日。
画面ばかり見ている日。
気持ちだけが先に走って、からだを置き去りにしている日。

そんな日も、七つの魄は、からだの側で黙って守りを続けてくださっています。
ふと肩の重さや、足の裏の感覚に気づいたときは、「からだの側の守り手が、ここにいるよ」と知らせてくれているのかもしれません。

眠る前の、七つの守りへのあいさつ

魄は大地につながる守り手。
だから、眠る前の時間がいちばん似合います。

  1. 布団に入ったら、からだの重さを、布団と大地にすっかりあずけます。
  2. 心の中で「今夜も、からだをお願いします」と、からだの側にいてくださる七つの守りに声をかけます。
  3. 朝、目が覚めたら「一晩、ありがとうございました」と伝えます。

数を数えたり、何かを思い描いたりしなくても大丈夫です。
あずけて、お願いして、お礼を言う。
それだけで、眠りが「ただ休む時間」から「守られている時間」に変わっていきます。

生まれる前から、一晩も休まずに

七つの魄がそろったのは、あなたがまだお母さんのお腹の中にいた、4か月目のこと。
それから今日まで、一晩も休まずに、からだを守り続けてくださっています。

天から授かった三つの魂と、からだを守る七つの魄。
光と影がそろって、月がひとつになるように。
あなたというひとりの人も、その両方に支えられて、今夜も眠りにつきます。

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参考:『洞玄霊宝自然九天生神章経』とその注釈、『雲笈七籤』(魂神の巻:三魂七魄)、『黄帝内経素問』宣明五気篇(肺蔵魄)。「魄」の字義(月の暗い部分)は古典の用例による。眠る前のあいさつは、あまねくもりのアレンジです。

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