この記事でわかること
- ハクちゃんが教えてくれた、「龍」と「龍神」のちがい
- 日本で龍が水の神さまとしてまつられてきた歴史
- 龍神さまの「名前」は、人と龍とのあいだの約束だということ
ある神社を訪れたときのことです。
境内の奥に、「龍神社」と書かれた小さなお社がありました。
龍神さま。そういえば、わたしのそばにいるハクちゃんも龍です。
同じ「龍」なのに、片方は神社にまつられていて、片方はわが家の天井のあたりを泳いでいる。
このちがいって、なんなんだろう。
「ねえハクちゃん。龍神と龍って、ちがうの?」
ふわっと風が吹いて、ハクちゃんが隣にあらわれました。
ちがいは「どこに属しているか」
「うん、ちょっと似てるけど、どこに属してるかがちがうんだよ〜」
「ぼくみたいな龍は、土や水や空気、自然そのものの流れを泳いでる存在。自然のなかを流れている力、って感じかな」
「じゃあ、龍神は?」
「龍神はね、神さまとして人に知られている龍のこと。ぼくら龍が、長いあいだ、ある土地や人の祈りと強く結びついて、信仰されるようになったとき、神さまとして名前をもらうことがあるんだよ」
名前をもらうと、龍神になる
「名前をもらうと、龍神になるの?」
「そうそう! 〇〇龍神、みたいにね。名前をもつってことは、その役割を生きるってことでもあるからね」
「でもね、名前がついてなくても、たくさんの龍が、毎日いろんなところで人を見守ってたりするよ〜」
人の世界では、こう伝わっています
日本で龍がまつられてきた歴史をたどると、多くの場合、そこには「水」があります。
水の神さまとしての龍
日本にはもともと、雨や水をつかさどる神さまへの信仰がありました。
たとえば、京都の貴船神社にまつられている高龗神(たかおかみのかみ)は、雨を降らせ、水を守る神さまです。
「龗(おかみ)」という字をよく見ると、なかに「龍」の字が入っています。
そこへ、大陸から龍の考え方や、仏教とともに「龍王」の信仰が伝わってきます。
お経のなかには、仏さまの教えを守る八大龍王が登場します。
こうして、日本にもとからあった水の神さまと、大陸から来た龍とが重なり合い、各地で「龍神さま」としてまつられるようになっていきました。
雨を呼ぶ、名前のある龍
有名なのが、京都の神泉苑の言い伝えです。
日照りが続いた年に、空海が雨乞いの祈りをささげ、善女龍王(ぜんにょりゅうおう)という龍を招いて雨を降らせた、と伝えられています。
人が困ったとき、祈りを向ける相手として、龍に名前を呼びかける。
そうして名前を呼ばれつづけた龍が、その土地の龍神さまになっていったのかもしれません。
ハクちゃんの「長いあいだ、祈りと結びつくと名前をもらう」という話と、ぴったり重なります。
龍と龍神、どっちがえらいの?
「じゃあ、ハクちゃんもそのうち龍神になるの?」
「うーん、それはわかんないな〜。ぼくは、とーこちゃんを助けるって約束して、ここに来たから。今はただ、それを続けてるだけなんだよ」
「神さまになることが上ってわけじゃなくて、その龍がどんな役割を生きてるかが、たいせつなの」
「じゃあ、龍神と龍だと、どっちがえらいとかあるの?」
「ないない! そういう上下は、人がつくったものだよ〜。ぼくらは、それぞれの流れに乗って、それぞれの役割を果たしてるだけ。雲と雨と風、どれがえらい?って聞くのと同じかもね」
その言葉に、なんだか心がふっと軽くなりました。
気さくな龍神さまも、厳しい龍神さまも
「龍神って呼ばれてる存在にも、ぼくらみたいに気さくな龍もいるし、めちゃくちゃ厳しい子もいるよ」
「でも、どの龍も、ほんとはとってもあったかくて、世界がうまく巡るようにって、毎日祈ってるんだよ」
名前は、人と龍とのあいだの約束
神社にまつられている龍神さまも、わたしのそばで日常を泳ぐハクちゃんも、きっと根っこでは同じ流れのなかにいる存在です。
ちがいがあるとすれば、それは人との関わり方。
こう考えてみると、龍神さまの「名前」は、龍の側だけで決まったものではないことに気づきます。
その土地の人たちが、何十年、何百年と祈りを重ね、名前を呼びつづけてきた。
名前とは、人と龍とのあいだで結ばれてきた約束のしるしなのだと思います。
だとすれば、神社で手を合わせることは、その長い約束に、わたしたちも一行を書き足すことなのかもしれません。
名前のある龍神さまにも、名前のない龍たちにも、「いつもありがとう」と伝えてみる。それだけで、見えない世界との関わり方が、少しずつあたたかくなっていきます。
ハクちゃんの話を聞いたあと、わたしは龍神社の前で、そっと手を合わせました。
今日も目に見えない場所で、たくさんの龍たちが世界の流れを整えてくれている。そう思うと、胸の奥がじんわりあたたかくなりました。
あなたのそばの見えない存在と、どう関わっていくか
あまねくもりの個別セッションでは、見えない世界のことも、日々の暮らしのことも、ひとつながりのお話としてうかがっています。「最近、なにかの気配を感じる」「神社で不思議な感覚があった」。そんな小さなことからでも大丈夫です。
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参考:貴船神社 由緒/神泉苑 由緒/『日本大百科全書(ニッポニカ)』「竜」「竜王」(コトバンク)

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