この記事でわかること
- 家鳴りの夜のあとに、わたしが身につけた3つの守り方
- 火打石の「切り火」に込められた、昔の人の知恵
- 守ることは、閉め出すことではなく「選ぶこと」だということ
あの家鳴りの夜から、しばらく考えていました。
「あれは、ただの気のせいじゃなかったなぁ」
古民家に住んでいると、ときどき不思議なことは起こるものです。
でも、あのときはたしかに「これは入れちゃダメなやつ」と、どこかで感じていました。それなのに、深く考えずに招き入れてしまった。
結果、半年も寝込むことに。今だから笑って話せますが、あのころはほんとうにしんどかったです。
そこで気づいたのは、見えない世界に「こんにちは」とあいさつするだけでなく、自分や家族を守る術も必要なんだということでした。
今日は、あの夜のあとから、わたしがふだんの暮らしで使っている守り方を3つお話しします。
その1 火打石で、場を切りかえる
わたしがよく使うのが、火打石です。
出会いは、出雲へ旅行したとき。立ち寄った天然石屋さんで火打石を見かけて、思わず手に入れました。
どうしてそんなに欲しくなったのか。ふり返ると、たぶん漫画『鬼滅の刃』に出てきたからです(笑)。
使うのは、家のなかの雰囲気がなんとなくよくないなと感じたときや、気持ちを切りかえたいとき。
カチンと打つと、小さな火花と澄んだ音が、一瞬でその場の空気を切りかえてくれます。
「ここからは、わたしたち住人の場所ね」という合図のようなものです。
昔からある「切り火」
火打石を打ってお清めをする習慣は、日本に昔からあります。
「切り火(きりび)」といって、江戸時代には、出かける家族や職人の背中に向かって火打石を打ち、その日の無事を願うならわしがありました。
いまでも、神社のお祓いや、お祭り、商売を営む家などで、切り火が続いているところがあります。
火には、けがれを清める力がある。昔の人は、小さな火花ひとつに、そんな願いを込めていたのですね。
その2 水を流して、よどみをためない
ふたつめは、水です。
わが家の庭には、古いお家によくある、水を溜めておくものがたくさんあります。
そこに落ち葉が入って、雨水が溜まって濁ってくると、なぜか家の空気までどんよりしてくる気がするのです。
だから、わたしは水に流れをつくってあげるようにしています。
溜まった水を入れかえたり、落ち葉をすくったり。
水がよどむと気もよどむ。水が流れると気も流れる。とてもシンプルですが、それだけで空気がふっと軽くなります。
その3 見えない線を、イメージで引く
みっつめは、目に見えない線を引くことです。
といっても、実際になにかを置いたり、手を動かしたりするわけではありません。
不用意に入ってこようとしているもの、悪さをしそうなものを感じたときだけ、頭のなかのイメージで、境目をつくります。
- 家ぜんたいを包む、透明な幕
- 部屋をまるごと入れる、透明な箱
- 人のまわりをかこむ、透明な膜や壁
そのときの感じに合わせて、かたちを選びます。
ぱっと思い浮かべるだけでも、「ここから先は入らないでね」という意思表示になるのです。
言葉も、場を包む布になる
それから、ふだんの言葉も大切にしています。
「ありがとう」「おかえり」「ここは安心していいよ」。
日々のやりとりのなかの言葉は、目に見えない布のように、ふわっと場を包んでくれる気がします。
守ることは、閉め出すことではなく「選ぶこと」
こうして書くと、見えない存在を追いはらう方法のように思えるかもしれません。
でも、わたしがいちばん大切にしているのは、見えない世界をぜんぶ受け入れるのでも、ぜんぶ閉め出すのでもなく、どう関わるかを選ぶということです。
わが家には、やさしい気配も、ちょっと困る気配も、いろんなものが通りぬけていきます。
ぜんぶを拒んでしまったら、森や風や、ご先祖さまからの声まで遠ざけてしまう。それは、わたしのしたいことではありません。
- 害のない存在は、そのまま「どうぞ」と通ってもらう
- 家族の居場所をゆらすようなものは、境目でストップ
- もし入ってきても、「今日はここまでね」とお帰りいただく
火打石も、水の流れも、見えない線も、そのための道具です。
守るというのは、こわいものを閉め出す壁をつくることではなく、「ここは安心していられる場所ですよ」と、場を整えておくことなのだと思います。
そうやって小さな工夫を重ねるうちに、こわさは少しずつ減っていって、暮らしを整える楽しさに変わっていきました。
次回は、家族と一緒に暮らすなかでの守り方のお話です。
あなたには、気持ちを切りかえたいときの「自分だけの合図」がありますか?
暮らしの場に、守りのしるしを置いておく
火打石が「その瞬間」の切りかえなら、護符は、思いをこめて、ずっとそばに置いておける守りのかたちです。あまねくもりでは、吉日に合わせて、結界を張った場で一枚ずつ護符を勤写・浄書し、お授けしています。
次のお話
第3話 家族を守る。長女と座敷童ちゃん、ワイワイうるさい家の結界
前のお話
第1話 連れて帰ってきちゃった? 夫の足もとにいた「なにか」と、家鳴りの夜
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参考:『日本大百科全書(ニッポニカ)』「切り火」(コトバンク)

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